「子どもの歯並びをきれいしてあげたい」「将来のために今やっておくべきかな?」
こう思われている保護者の方は多いかと思います。しかし、矯正治療を始めるタイミングは、ご自身では判断が難しいですよね。
今回は、「いつから矯正治療を始めればいいの?」という方、または「矯正治療に年齢制限はあるの?」という方に向けて、乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期の年齢別アプローチについて解説していきます。
目次
はじめに
矯正治療は行う時期によって、できること、治療の内容、使用する装置などに特徴があります。今回は乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期それぞれの矯正治療の特徴について解説します。
乳歯列期の矯正
乳歯列期とは
「乳歯列期」とは、乳歯(子供の歯)が全て生え揃ってから、永久歯(大人の歯)が生え始めるまでの時期を指します。
初めて乳歯が生えるのは生後6-7か月頃、たいていは下あごの前歯です。それから順番に生えていき、3歳ごろに20 本の乳歯が生え揃います(乳歯列の完成です)。
永久歯が生え始めるのは6歳頃からなので、3歳から6歳前後までを「乳歯列期」と言います。
早期介入のメリット
矯正治療は永久歯が生えてきてから行うもの、というイメージがありますが、乳歯列期でも矯正治療を行う場合があります。
乳歯列期の子どもは著しく成長していきます。歯を支えるあごの骨も、体の成長に合わせて大きく変化していきます。成長の過程で上あごと下あごの大きさや位置関係のバランスが崩れてしまうことで、将来的に永久歯のかみ合わせが悪くなってしまう可能性があります。そのため、あごが著しく成長する乳歯列期の矯正治療は、将来の生えてくる永久歯のための土台づくりとなります。
乳歯列期における理想的な歯並びとは、上の歯が下の歯より外側にあり、歯と歯の間にすき間があることです。下の歯が上の歯より外側にある咬み合わせ、いわゆる受け口は「反対咬合」もしくは「交叉咬合」といいます。自然に改善することは難しい咬み合わせなので、できるだけ早く矯正治療で正しい咬み合わせに治す必要があります。
また、乳歯列期ですき間のない歯並びは、一見問題がなさそうに見えます。しかし、乳歯と生えかわる永久歯は乳歯よりも大きいため、乳歯列期に歯と歯のすき間がないと永久歯列期ででこぼこの歯並びになる可能性が高いです。このような場合も、乳歯列期からあごの大きさを広げる事で永久歯が生えてくる場所を確保することができます。
乳歯列期の治療オプション
乳歯列期では、反対咬合(受け口)や交叉咬合(奥歯で咬み合わせがずれている状態)、開咬(前歯で咬めない状態)などの不正咬合がある場合、矯正装置を用いて歯並びの改善を行います。
当院では「プレオルソ」というマウスピース型の矯正装置を使用します。プレオルソは歯に大きな負担をかけることなく、歯やあごを移動させ、不正咬合を改善します。また、口呼吸から鼻呼吸に促すことができたり、舌の正しい位置や正しい発音をトレーニングできる効果もあるため、MFTを同時に行うことで正しい口腔機能の獲得を目指します。
混合歯列期の矯正
混合歯列期とは
混合歯列期とは、乳歯から永久歯への生え代わりが始まり、乳歯・永久歯の両方がお口の中に存在する時期のことを指します。一般的に、永久歯は6歳頃に下あごの前歯や上あごの第一大臼歯(いわゆる6歳臼歯)から生え始めます。全ての乳歯が生え代わるのが12歳前後なので、6歳から12歳前後までを「混合歯列期」と言います。
混合歯列期だからできること
混合歯列期に行う矯正治療のことを、第一期矯正治療と言います。第一期矯正治療は、今咬み合わせで困っていることはもちろんですが、それに加えて将来生えてくる永久歯のための土台作りを目的に行います。具体的には、上あごと下あごの骨格的なバランスを整えること、咬みやすい歯並びにすること、あごの成長に悪影響を与えるものを取り除くこと、永久歯が正しい位置に生えてくるよう誘導すること、などが挙げられます。
混合歯列期の一番の大きなメリットは成長期であることです。体の成長と同時にあごの骨も成長していきますが、成長期前に上下のあごのバランスが乱れている場合、放置してしまうと成長に伴いますます咬み合わせが悪くなっていきます。このタイミングで矯正治療を行うことにより、上下のあごのバランスを骨格的に整え、将来的によい歯並びとなるよう誘導することができます。
歯はあごの骨に支えられているのですが、歯に対してあごの小さなお子さんは全ての歯をきれいに並べる場所が足りないため、でこぼこの歯並びとなってしまいます。混合歯列期では、あごの骨と骨の継ぎ目(縫合)が完全に固まっていないため、あごを広げる治療が可能となります。あごを広げることで歯を並べる場所を確保できるため、でこぼこの改善が期待できます。乳歯が全て生え代わり永久歯列期となるころには縫合が完全に骨化してしまうため、あごの拡大は期待できません。
また、混合歯列期のお子さんはMFT(口腔機能療法、Oral Myofunctional Therapy)という、お口の周りの筋肉のトレーニングの効果が得られやすい時期です。MFTについては別の記事で詳しく解説しますので、ぜひご覧になってみてください。
保護者の方に協力してほしいこと
混合歯列期に行う矯正治療では、取り外し式の装置を使用する場合が多いです。取り外し式の装置は使った時間がそのまま効果となって現れるため、お子さん本人の協力が必須となります。まだ年齢の低いお子さんは慣れるまでは装置をうまく使えないこともありますので、保護者の方も使い方を覚え、一緒に頑張っていただきたいです。また、固定式の装置の場合は歯磨きがとても難しくなりますので、必ず仕上げ磨きをお願いいたします。
治療オプション
混合歯列期の矯正治療(=第一期矯正治療)では、お子さんのお口の状態に応じてあごを広げる取り外し式の装置や、でこぼこを整える固定式の装置などを使用します。
永久歯列期の矯正
永久歯列期とは
永久歯列期とは、乳歯が全て生え代わり、全て永久歯となる時期を指します。一般的に、永久歯列は7番目の歯が生えてくる12歳前後に完成します。親知らずは20歳前後に生えてきますが、ずっと骨の中に埋まったまま、生えてこない方もいます。
治療を始めるタイミングについて
永久歯列期で行う矯正治療を第二期矯正治療と言います。7番目の歯がまだ生えていなくても、乳歯が全て生え代わっていれば第二期矯正治療となりますが、10代前半の方と成人の方では治療を始めるタイミングが異なる場合があります。
10代前半の方は咬み合わせの状態によって治療開始のタイミングを考える必要があります。永久歯列期が完成する12歳前後は、身長が大きく伸びる第二期成長期が訪れます。この時期は身長の伸びと同時に下あごも大きく成長します。上の歯が前方に出ている上顎前突やでこぼこなどは、下あごの成長が矯正治療に有利に働くので、治療開始のベストなタイミングと言えるでしょう。逆に、下の歯が上の歯より前に出ている下顎前突では、矯正治療で前歯の咬み合わせを治しても、下あごが成長し、直ぐに反対咬合に戻ってしまいます。そのため、下顎前突の場合は身長の伸びが落ち着くのを待ってから治療開始する場合が多いです。ただし、直ぐに矯正治療を始められないからと言ってそのまま放置しておくのはおすすめできません。咬み合わせが悪い方は、舌の癖や上手く飲み込めないといったお口の機能異常があることが大半です。装置をつける前からMFT(お口周りの筋肉のトレーニング)を開始し、歯並びに影響する癖を改善しておくことが、矯正治療が終わってからの歯並びの安定につながります。
成人の方は成長が終了しており、上あごと下あごのバランスが変化することはないため、いつでも治療が始められます。年齢制限の上限もありません。ただし、矯正治療にかかる期間はおおよその目安として1年~3年と長期間となりますので、就職や結婚などのご予定がある場合や、遠方へ転居する可能性がある場合は事前に相談しておくことをおすすめします。また、必要な場合は、矯正治療に先立って虫歯や歯周病の治療を行います。
治療オプション
永久歯列期の矯正治療(=第二期矯正治療)では、ワイヤー矯正、マウスピース矯正を扱っております。ホワイトワイヤーなど、目立ちにくい装置もご用意しております。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、乳歯列期・混合歯列期・永久歯列期、それぞれに行う矯正治療の特徴について解説しました。
歯並びはひとりひとり個性があり、治療を始める時期や治療内容は一概には言えません。気になることがあれば、まずは矯正治療の専門ドクターに相談しましょう。お口の中を実際にみて、それぞれにあった治療プランをご提案します。
当院では無料矯正相談を行っております。いつでもお気軽にご相談ください。